お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーン お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーン お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーン お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーン

お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーンお気に入りの音楽 千夜一夜



  第25夜 イン・ア・メロー・トーン(In a mellow tone)

【入場の時ににかけてほしい音楽】
お気に入りの音楽千夜一夜 イン・ア・メロー・トーン ベイシー・ビッグ・バンドの曲で一番好きな曲はと聴かれたら、多分この「イン・ア・メロー・トーン」を挙げるかもしれません。それ位、好きで好きでたまらない曲です。ミディアム・テンポのちょっと遅めにゆったりと演奏されるこの曲は自然に歩く時にかかるとちょうど気持ち良いかも。


【結婚式の入場に使ってみた】
そういうこともあって僕の結婚式の入場の音楽にこの曲を使いました。音楽にこだわりのある僕です。自分の結婚式の音楽ぐらいはこだわってみようと、ホテルにお願いして全部僕が選曲した音楽を流してもらいました。堅苦しいセレモニーが終わって宴がはじまる時は、EW&Fの「セプテンバー」、キャンドル・サービスは、ナット・キング・コールがストリングスをバックに歌う「スター・ダスト」です。しかし、まだ結婚していない人に忠告しますがこういうことはできればしないほうがよいです。理由ですか?要するにこういうことです。


【中途半端に終わった僕自身の結婚式】
 実際にやってみてわかったのですが、結婚式に流れる曲を自分で選曲してしまうと次はこの曲が流れるはずだがと進行が気になってきます。次はこの曲が流れるはずだが違う曲がかかってしまったらどうしようなどとあらぬ心配をし始める始末です。お陰で自分の結婚式なんだという気持ちになかなかなれず気持ちが中途半端な状態で何か物足りなさを感じながら式は終わってしまいました。なので、結局全てホテルにお任せしてやったほうがよかったなあと今思えば反省しています。これから、結婚式を挙げる人は参考にしたほうがいいですよ。


【いぶし銀の渋いリズム】
 さてイン・ア・メロー・トーンの話です。この曲は間を大切にしたアレンジがなされていてどちらかというと玄人好み。間を生かしたベイシーの独特のフレーズによるピアノソロからはじまります。決して華麗にパラパラとは弾きません。ブラスセクションが活躍する曲ですがブラスが演奏した後、暫く間がありリズムセクションが淡々とリズムを刻むというパターンが多く見られます。フレディ・グリーンが奏でるいぶし銀のギターの刻みが光ります。この曲のメロディは色んなところで繰り返し登場します。ある時はトロンボーンセクションの控えめなユニゾンで、ある時はトロンボーン、トランペットによる華々しいアンサンブルで....


【タメを利かせて演奏する】
 23夜でお話しましたがこのメロディを普通に譜面どおり弾いても様になりません。タメを利かして、もたるぐらい遅弾きしないとダメなんです。ところで「タメを利かす」と「もたる」は似た様な言葉ですがミュージシャンにとっては大きな意味の違いがあります。その気がないのに遅れてしまうのが「もたる」、自分で意識してタイミングを遅らせるのが「タメを利かす」です。要するに「もたる」は、へたくそという意味も兼ねるわけです。ジャズ・プレイヤーはみんなこのタメを利かす演奏法ができるようになっていてジャズらしく演奏できるというわけです。


【微妙なタメのタイミング】
 ちょうど「イン・ア・メロー・トーン」ぐらいのテンポの曲が一番このタメの奏法が必要とされるのかもしれません。大体、3連の8分音符1つ弱ぐらい遅らすとジャジーな感じになります。24話でリズム・セクションのタメの話をしましたが、リフを吹くトランペットやトロンボーンは上で説明したようにタメを効かした演奏をします。ただいつもこう演奏すればいいかというとそうでもないのです。速度が変わればタメの程度も変わりフレーズによってはジャストのタイミングで演奏しなければならない場合もあります。あくまでも一例として理解してください。


【暇を持て余したトランペッター】
 ところで、僕がもってるベイシーのレコードで「Breakfast Dance And Barbecue 」というアルバムがあります。このアルバムに「イン・ア・メロー・トーン」が入っていますが面白いエピソードを一つ。上で書いた繰り返し登場するメロディはトロンボーン・セクションが中心に演奏するところがあるのですがこの部分はトランペットセクションはお休みすることが多いです。手持ち無沙汰なのかリズム・セクションだけでリズムを刻む正に間を生かす演奏のところでかすかな音で「プァ~」とダウングリースし演奏をぶち壊しかねない不届きなトランペッターがいるのです。それも3回も。たまりかねたベイシーが「ハッ」と一喝して止めさせる様子を注意深く聴けば聴き取ることが出来ます。


【耳を澄ましてほくそ笑もう】
 ダウングリースもベイシーの一喝もとても小さい音なので普通に聴いている分には気がつかない程度です。僕も何度もこのレコードを聴いているのに気がつきませんでした。サークルで一緒のベイシー狂の友達に教えてもらって初めて気がついたぐらいです。注意して聴いてみるとかすかにダウングリースが聴こえその後にベイシーの一喝が....ほんとに教えてもらった通りだったので思わず笑ってしまいました。こういうマニアックなことを知っていると今まで聴いていた以上に愛着が湧いてさらに味わい深く聴ける気がします。「Breakfast Dance And Barbecue」を聴く機会に恵まれたら是非耳を澄ましてこのやりとりを聴きとってみてください。きっと、貴方も思わずほくそ笑むことでしょう。今日は、これで御終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:Duke Ellington
作詩:Milt Gabler
アルバム:Breakfast Dance And Barbecue(Count Basie)


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