お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランド お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランド お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランド お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランド

お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランドお気に入りの音楽 千夜一夜



  第24夜 ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland)

【爽快な疾走感】
お気に入りの音楽千夜一夜 ララバイ・オブ・バードランド この曲はジャズのスタンダード・ナンバーです。色々なジャズ・ミュージシャンが星の数ほど演奏していますがこの曲の演奏で僕が「おお」と思ったのに男性ボーカルのメル・トーメが歌ったものがあります。ピアノ:ジョージ・シアリング、ベース:ブライアン・トーフのピアノ・デュオをバックに歌っていますが、なかなか爽快に歌っています。早めのテンポで歌っており心地よいスピード感が感じられます。ドラムなしなのにです。素晴らしいリズム感ですね。


【歌に感じるビート感】
メル・トーメは、テーマからかなりフェイクして歌っていますがそれだけでは飽き足らず1コーラスが終わるとスキャットを歌いまくります。これも適当に歌っているというわけではなくフレーズがよく考えられていてメル・トーメの歌心を感じます。メル・トーメを聴いて一番に感じることはビート感を感じさせる歌を歌える人だなあという点です。リズム感が抜群に良いとこんな風に歌えるのかしら?ビート感が伴うとほんと、颯爽という感じに聴こえます。僕も真似したいですが、なかなか難しくてメル・トーメみたいな感じには歌えません。ところで、この演奏はアレンジも素晴らしくスキャットの途中で突然雰囲気が変わり4ビートからバロック風になってしまいます。スキャットのフレーズもバロック風に変わりますが、その雰囲気が切り替わる瞬間が鳥肌が立つほど良い感じです。この曲を初めて聴いたときは素晴らしい演奏に出会えてほんとに嬉しかったなあ。こういう素朴な感動の積み重ねが音楽を続ける原動力になるような気がします。僕の場合は正にそう。


【名曲を生み出したメル・トーメ】
 メル・トーメは、ボーカリストですが、只者ではありません。メロディ・メーカーの才能を発揮し、クリスマス・ソングの名曲を作りました。曲の名前は、「ザ・クリスマス・ソング」。1曲の中で転調しまくる演奏者泣かせな曲ですが、コードの複雑さを意識させない素晴らしいメロディを持っています。今のところ、クリスマス・ソングの中では僕の一番のお気に入りの曲です。あまり作曲者が誰かということは意識しないほうなのでメル・トーメが作ったということは最近知りました。クリスマスの時期にはいつも、マンハッタン・トランスファのCDを聴いて過ごすことにしていますがこの「ザ・クリスマス・ソング」も含まれています。或る日何気なくアルバムの解説を見ていてメル・トーメが作曲した曲であることを知りました。


【4ビートのリズム・パターン】
 話を「ララバイ・オブ・バードランド」に戻します。先ほど4ビートと書きましたがこれはジャズ特有のリズムで、ベースが4分音符を刻みドラムスはレガート奏法という一定のリズムパターンで刻みます。レガート奏法を楽譜で近似してみると下のようになります。



 あえて近似と書いたのは、この通りシンバルを叩いてもジャズらしくならないからです。図ので囲った音はミディアムテンポの場合通常の3連符のタイミングより少しためて演奏するとジャズらしくなります。


【微妙なタイミングが生み出すビート感】
 逆に超ハイスピードの曲の場合は8分音符のタイミングに近いくらい早乗りで演奏します。こう明快に説明できるのはMIDIをいじって試行錯誤することを通じて経験的に段々理解できるようになったからです。MIDI(ミディ:コンピュータと接続して色々な音を出すことが出来る機械のこと)で音楽を作る場合、タイミングは数値で表現されるのでそういうことが一目瞭然でわかるというわけです。クラシックと違い、ジャズはリズムが命。ベースも細かいことをいうと正確に4分音符を刻むのではなくほんの少し早ノリで演奏します。さらにいうと2、4拍目は1,3拍に比べてほんのすこしさらに早乗りして弾くとビート感のあるベースラインになるようです。


【ビート感を生み出す練習】
 ベーシストは感覚的にそういうのがわかって弾いているみたいですがそういう感覚を養うには長い時間が必要なようです。僕のはいった大学のビッグ・バンド・サークルのベースの先輩がビートを出す練習だといってメトロノームに合わせて延々とベースラインを弾く姿をみてちょっと感動したことがあります。メトロノームは正確にリズムを刻みます。それに合わせて少し早乗りでベースを弾けるとビート感が感じられるという訳です。ここまで、真剣にリズムを探求する姿勢には頭が下がりました。


【リード楽器のビート感】
 リズム・セクションは今書いたようにジャズのビート感を表現しますがサックス、トランペットなどのリフを吹く楽器の場合はもう少し複雑なタメが要求されます。それはまた別の機会にお話します。今日は、これで御終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:George Shrearing
作詩:George David Weiss
アルバム:An evening with George Shearing and Mel Torme


       御感想、御指摘等のご連絡は、までどうぞ