【日曜日爽やかに起きられる音楽】
日曜日に朝起きて、爽やかな気分を味わえる曲って何でしょう。僕の場合2曲あって1つは、セルジオ・メンデスの「マシュ・ケ・ナダ」(第13話参照)、もう1曲は今から紹介する「ラビング・ユー」です。「マシュ・ケ・ナダ」は、曲全体がなぜか日曜日に聴きたいと感じるラテンの名曲。不思議にいつも聴きたいなあと思い出してたなあ。小学校の時から日曜日の朝は聴いていたっけ。社会人になってから日曜日に聴きたい曲が増えました。小鳥のさえずりとかが入っていて実に爽やか。まさに朝、聴くと幸せを感じてしまいます。それがこのラビング・ユーという曲なんです。
【超音波声?】
この曲はミニー・リパートンという女性ボーカリストが歌っています。最近、マライア・キャリーにはまっているのですが、彼女が時たま発する超音波のようなハイ・トーン・ボイスって目を引きますよね。これは、マライアが元祖かというとそうではありません。この、ミニー・リパートンが元祖なんです。最初、聴いたときはあまりの音程の高さに人の声とは思わずえらくトーンの高い楽器が演奏されているぐらいにしか感じませんでした。何回か聴いているうちにこれはひょっとして人の声ではないかと感じるようになり、さらに聴いていくうちに確信に変わりました。実際、レコード(これを聴いた当時はレコード全盛の時代でCDは数えるほどしかありませんでした。)をよく見てみると脅威の7オクターブと書いてある。おお、このことかと一人で納得してしまいました。しかし、7オクターブというのはほんとに凄いことですね。もう声の楽器と形容するにふさわしい。1オクターブは12音あるので12音×7オクターブ=84なのでピアノを例にとると84鍵分のピアノのキーに相当する音域を声で出せることになります。ピアノの鍵盤は普通88鍵ですからピアノと同じぐらいの音域をほぼカバーできてしまうということになります。そう考えると何か凄いですよね。自分の声と比較するとよくわかるので僕自身どれくらいの音域を持っているか調べてみることにしました。地声で出せるのは、最低音がFです。そのオクターブ上のFは普通に出すことができますが、さらに1オクターブ上のFはきついですがなんとかだせるぐらいです。そこから、G、G♭、Aとだしてそこまでが精一杯です。つまり僕の音域は2オクターブちょっとしかだせないということになります。かたや、7オクターブです。ミニーリパートンは僕の3倍の音域を持っているということになりいかに人間離れしているかということがよくわかります。7オクターブということは男性である僕より低い音を出せたりして...そんなことないか...もしそうだとしたら、泣いちゃうよね。
【テンションで豊かなサウンド】
ところで、この曲のコード進行ですが、あまり複雑なコードを使っていません。Cのキーで第29話で紹介した4音のコードで書いてみると、Fmaj7 Em7 Dm7 Cmaj7 です。ハーフ・ディミニシュもディミニッシュ・コードも使っていない基本的なコード進行です。このままだとサウンド的にはちょっと平凡なので変わった音が欲しくなります。例えば、Fmaj7の(ファ・ラド・ミ)の基本構成の上に、ソの音を加えてみます。ピアノをお持ちの方はちょっと弾いてみてください。基本の4音で弾くよりちょっと豊かな音になったと思いませんか?このように基本構成の音に加えて音をより豊かにする音のことをテンションと呼びます。
【音の組み合わせは奥が深い】
先ほどのソはF(ファ)に対しては9度なのでこのテンションのことを9th(ナインス)と呼びます。じゃあ次のEm7も9thを加えればいいかというとそうでもありません。Em7の9thはファ♯になりハ長調の音階からはずれた音になり不響和音となってしまいます。まあ、まれなケースで敢えてここに9thを使うサウンドもないことはないですが通常の曲ではまず使いません。この場合は、ラの音(11th)を加えます。え、変な音だって?そうそう、音の組み合わせも大事です。ミ・ソ・ラ・シ....と順番で弾いてみてください。どうですか?ファンタスティックな音になったでしょ?Dm7、Cmaj7も9thを加えれば豊かな音が得られます。こんな風にして実際楽器を演奏する時は上で説明したテンションを適切に混ぜて豊かなコードの響きが得られるように特にピアノとかギターのミュージシャンは皆工夫して音作りに励みます。僕もその一人かな?色々なテンションを加えてみてどんな音になるかなって遊んでいると偶然素敵な音の組み合わせを発見したりすることが極まれにあったりします。そんな時はほんとに嬉しくて小さな幸せを感じます。
今日は、これで御終い。
では、また明晩お会いしましょう。
[関連情報]
作曲:M.Riperton/R.Rudolph
作詩:M.Riperton/R.Rudolph