アカペラへの道~
第10話 プレリュード・イン・Eマイナー
(Prelude in E minor)
今までプチ・アカペラ・パートを作り将来1曲通してアカペラの曲を作ろうと頑張ってきましたがとうとう僕の努力が報われる日がやってきました。そうとうとう完成したんです。1曲通してアカペラで歌う曲が!思えば長い道程でした。ビールかなんかでお祝いしたくなっちゃいます。1曲通してアカペラの曲の題名は「プレリュード・イン・Eマイナー」。ショパンが作曲したクラシックの曲です。この曲はジャズとも関連が深くバリトン・サックスのジェリー・マリガンが取り上げたりしています。
完成したアカペラを全部通して聴く ライナーノーツ
お気に入りの音楽千夜一夜
【音域の問題】
- 元々歌うために作られた曲ではないので思いっきり音域は広いです。しかも音が飛ぶのでメチャクチャ歌いにくい。最初はほんとに歌えるようになるのかいなという感じでしたが慣れてくると感じが掴めてきました。結局原曲と同じキーにしましたがファルセットを使いまくる音域になってます。
ちなみに、ファルセットをうまく歌うためには地声との切替点をどこに置くかをよく考えることが大事だということを認識させられました。もう少し低い点で切り替えられればもう少しうまく歌えるかもしれませんがこれは時間がかかります。今の実力ではこの程度が限界のようです。
【音程の問題】
- いつも思うことですが全部アカペラで歌うと音程が悪いことが目立つので実力のなさを切に思い知らされます。この曲はロング・トーンが多いです。特にメロディはそう。なのでロング・トーンを出している時に音量の抑揚をつけると良い感じになるような気がして挑戦してみたのですが慣れないと音程も一緒にずれてしまいます。気持ちよく歌っているとよけいひどくなってしまう。最悪なのは歌っているときに全然気が付かないこと。家に帰って冷静に聴いてみるとひどい出来だということがわかるのですが後の祭りです。抑揚はどうしてもつけたかったので何回も挑戦しましたがこれも慣れてくると少しずつ改善してきてなんとか聴けるレベルまで収まってきました。早く気持ちよく歌っても音程がずれないような実力をつけたいのですが地道に努力すれば少しずつですが改善する手応えを得た気がするので腐らずに頑張ってみようと思います。
【アレンジの問題】
- アカペラのボイシングを考えるにあたり原曲のハーモニーをまずは解析しました。見れば見るほどよく考えてあるなあと感心してしまいます。特に左手の伴奏の作り方は目を見張ります。和音のどれか1音が半音下がってどんどん違うコードに変化していく様はまさに芸術的。結局、ハーモニーはショパンの楽譜で使っている音をそのまま使いました。コーラスで一番ハモるよう低すぎる音は1オクターブ上に持ってくるとかした程度で基本的には変えていません。大抵既存の曲を聴く場合、ここは自分なりにこういじってしまおうという気になるものですがこの曲の場合はそういう気持ちが起こりませんでした。
- 原曲の左手の伴奏は割と単純なリズム・パターンなのでここはアカペラでそのままやってしまうと多分しょぼくてダメそうだったのでリズムに変化がでるよう工夫しました。2声目は8分音符の頭、3声目は8分音符の裏、4声目は複合リズムで歌うことにしました。譜面にするとこんな感じ。
●:第1パート
●:第2パート
●:第3パート
●:第4パート
【その他の問題】
- MIXをする時に思ったのですが普通にバンド伴奏+コーラスのような曲のつもりでMIXすると低音が少ない感じがしてしまいます。イコライザの設定がうまくできるまでちょっと苦労しました。いつもの構成と違う曲を作る時はスピーカとかで再生して違和感がないかどうか確認するのが大切ですね。ヘッド・ホーンではなかなか気づきにくい時があります。
- アカペラの場合歌だけで伴奏はありません。通常のバンド演奏がある曲の場合出来るだけハモって聴こえる様各コーラス・パートの定位を真中に設定しています。がですよ、アカペラの場合これでいいのだろうかという疑問が沸いてきました。全部中央の定位ではモノクロの録音と同じでまったく広がりがありません。ということで4声あるパートに其々定位を設定しました。(2nd:-160、1st:-80、4th:80、3rd:160)
- この曲が完成してしまったということはこの「アカペラへの道」も役目を終えたことになります。しかし、10話で終わらせてしまうのはちょっと寂しい気もします。1曲通してアカペラの曲を作れたからと言って歌の実力が飛躍的に伸びるわけでもありません。これから新たに作る曲も以前と同じようにプチ・アカペラ・パートを作ってあいも変わらず同じように努力するつもりです。なので暫くこの「アカペラへの道」は続けてみようと思います。このシリーズが完成する時は長いアカペラの曲を造作もなく簡単に作れるような歌の実力が備わった時に幕を下ろすことにします。この後もお付き合いください。
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