この曲は、シューベルトが作曲した有名な曲です。一度は、聴いたことがあると思います。僕の歌の師匠、森 美紀子さんがレパートリーにしていて「ふーん、良い曲だなあ」と、印象に残っていました。或る日ネットサーフィン中に偶然この曲を歌う美しいソプラノに出会いました。それが、きっかけで僕もあんなふうに歌いたいという気持ちが高まってきてこの曲をアレンジしてみようと取り組み始めました。が、これは課題が山積み状態で完成させるまでには長い時間が必要でした。
完成したプチ・アカペラ・パートを聴く お気に入りの音楽千夜一夜
2ndCD いばらのファルセット
- 【アレンジの問題】
- アレンジの構成は、すぐ思いつきました。1コーラス目は、自由気ままなアカペラ、2コーラス目は同じくアカペラでオリジナルのピアノ伴奏を歌でシミュレートし、その上にリードボーカルを乗せる。3コーラス目は、オリジナルのピアノ伴奏に4声のコーラスを乗せる。これで後は実際作るだけだなと、思ったのですがこれからが長かった。1コーラス目でぶつかった壁は、アレンジがしょぼいこと。アカペラは、伴奏に乗るコーラスとは違い単純に4声を重ねるだけではなかなかかっこよくなりません。ボイシングを色々工夫して変化をつけてやる必要があります。そこで思いついたのがメロディを補完するするような副メロディに1声を割り当てる方法です。主メロディを引き立つような副メロディを最初に作ります。次にメロディと副メロディが映えるように後の2声を補完的にボイシングするというやり方を試してみました。かなり試行錯誤しましたがうまくいきそうな手ごたえもあり何とか聴くに堪えるアレンジを作り上げることができました。次は2コーラス目です。ここでぶちあたった壁を解決するには長い時間が必要でした。オリジナルのピアノ伴奏をそのまま忠実に声でシミュレートすると何故かうまくいきません。もともと音程が悪いのでそのせいかとの最初は思いましたが何回入れ直してもうまくいく気がしないのです。ちょっと悩みましたが、そのままシミュレートするのではなくアレンジを施して改善する必要があると感じるようになりました。でも、どうやってアレンジするかが問題です。悩んだ末、2拍3連のリズムを使うことを思いつきました。ピアノ伴奏をそのまま声でシミュレートすると間が抜けた感じになってしまいます。ピアノで弾くとどうしてそう聴こえないか不思議ですが、そう聴こえてしまうのでいたし方ありません。2拍3連のリズムを使うことによって音数を増やしたら間の抜けた感じが解消されるのではと思ったわけです。ベストとは、言い難いのですが前よりは改善されたなという手ごたえを感じたのでこの線で進めることにしました。3コーラス目の4声ボイシングは、何回か他の曲でも経験がありあまり悩まずアレンジすることができました。しかし、トップは殆ど裏声で歌う音域で歌う必要があり音域の問題でつまづいてしまいました。
- 【音域の問題】
- そもそもこの曲に取り組みはじめたのは素敵なソプラノを聴き僕もあんな風に歌えたら好いなあという素朴な憧れがきっかけです。憧れたソプラノを僕が歌うには裏声でまともに歌えるようにしなくてはなりません。これが一番の課題でした。一人コーラスをやるのにも裏声で上手に歌えるようになることは避けて通れない課題なので意気込んで真正面から取り組んだのですが、なかなかうまくいきませんでした。改善はするものの人様に聴いて貰えるレベルにはとうとう到達しませんでした。3コーラスとも裏声で歌うつもりだったのを裏声で歌うのは3コーラス目の4声コーラスの部分だけにして1,2コーラス目は1オクターブ下げて地声で勝負することにしました。これで音域の問題が解決したかと言うとそうではありませんでした。2,3声も部分的に裏声を使う必要があったからです。でも、部分的なのでしつこく何回も入れ直して何とか聴けるレベルになった気がします。で、裏声をマスターする努力は今後も続けるつもりです。まだ、ソロで聴かせる実力はありません。が、地道に努力していつかはマスターできる日を夢見ていたいと思います。
- 【音程の問題】
- この曲のアカペラパートは、2コーラスにもわたる長丁場で設定しました。これだけ長いともう音程が悪いところが各所に出てきて収拾がつきません。さらに、新たに裏声を使って録音しようということで収拾つかない状態にさらに輪をかけて悪い状況になってしまいました。実力のなさを痛感し中断すること数回...1箇所ぐらいなら聴いていてあれおかしかったなで済みますが、「アベ・マリア」の最初の頃のMIXを聴くと聴く気が失せて途中で聴くのを止めてしまうぐらいひどい出来でした。これは何回も入れ直すしか方法はなく根性でここまでにしたというのが正直な感想です。
でも、2コーラスにわたる長丁場の録音を通してうまく歌うコツを少し体得できたかなという気もしました。誰でもそうですがマイクを前にするとついつい力が入ってしまって力んで歌ってしまうんですがそうしている自分に気が付くようになりました。ふっと力を抜いて歌うとあらら不思議、とても自然で音程も正確に録音できることも体感しました。ひとつのことを続けていけばそれなりに得られるものがあるんだなあと感じられたのもこの曲を通して経験できたと思います。
- 【その他の問題】
- アカペラの最高峰といえば、なんといっても「TAKE6」ではないでしょうか?僕のアカペラもいつかは「TAKE6」みたいになーんて思たりしてがんばってみようといつも思っています。ところで「TAKE6」のCDを聴いていて僕の「アベ・マリア」を比較すると当たり前ですが全然違います。で、仮にアレンジとか音程が「TAKE6」と同等レベルだったらと想定して比較してもそれだけではすまない何かがあるような気がしてなりません。プロだから何かが違うんだなと納得しようと思ったりしましたがどうしても納得できません。CDをよーく注意して聴いてみます。そして、閃きました!バス(一番低音の声を出す人のこと)の声が全然違う。僕はもともと低音は苦手。とてもバスの人のような豊かな低音は出ません。が、しかしだ、この低音は只者でなさ過ぎる。それでピンときました。バスにコンプレッサが深くかけてあるんじゃないかなってね。詳しくは次回、第4話で詳しくお話することにしましょう。
- もう一つ気が付いたことは、1,2コーラスのアカペラ部分と3コーラス目の伴奏つきコーラスのイコライザの設定は其々最適な値に設定する必要があると言うことです。アカペラに最適に設定して4声コーラスを鳴らすと高音がきつすぎて耳障りな音に鳴ってしまいます。この辺は実際試してみて気がつくことなので貴重な体験です。
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