貸スタジオの小さな幸せ



3.スタジオの帰りに道草する小さな幸せ



 スタジオの帰り道大抵コーヒーを一杯飲んで帰ることにしている。貸スタジオでは、ほとんど立ちっ放しで歌う。かなり真剣に歌うのでかなり疲れる。特に新曲のコーラスを初めて入れる時は顕著だ。譜面を読むのはちょっと苦手。歌詞にも慣れていないから真剣にやらないと2時間では4パート録音するのは、きついものがある。4パート入れきれないと次週に持ち越しになるのでこのあとのMIXをする幸せ(その4で登場)を感じることができなくなるので意地でも入れてやるという気持ちでいつも取り組む。だから、ヘトヘトになってしまう。


コーヒー屋にはいって暫くはボーっとしている。そのうち、段々スタジオで格闘した様子が思い出されてくる。気が付いたことや、今度こうしてみるかということを思いつくまま書き留める。コーヒーを1杯すする。おお、満たされた気持ちを感じる。これも、僕の小さな幸せ。タバコに火をつける。(僕は愛煙家)一口煙を吸い込むと少し疲れがやわらぐ気がする。これも、僕の小さな幸せ。僕の立ち寄るコーヒー屋はいつもジャズのスタンダードや、クラシックを題材にしたイージーリスニングな音楽が流れている。あ、「So in love」だとか、「Bye bye black bird」だとか、一人でにやにやしながら流れる音楽を聴く。フーン、僕だったらこういうアレンジにするのになあ、などと思いながら自分が名アレンジャーになったつもりで聴く。なかなか、楽しいひと時なのである。


ところで、コーヒーは僕の元気の素みたいなところがある。飲むと何となくだが元気が出るような気がする。僕は、砂糖もクリームも入れない。ブラックで飲む。結婚する前は砂糖もクリームも入れていた。細君は元々ブラック派。そんな苦いのよく飲めるねとからかっているうちに僕もブラック派になってしまった。きっかけは豆大福である。えーと、どういうことかというと或る日、細君が豆大福をコーヒーで食べようとしていた。僕は何でお茶にしないの?おかしいよと文句をいったのですが、細君は平然と「砂糖とクリームを入れるからよ。ブラックだとなかなかいけるわよ」とのたまう。ほんとかいな、半信半疑でじゃあ、僕も試してみる。「おお、細君のいう通りだ。」なかなか素晴らしい味がしました。それ以来、毎週日曜日は午後のひと時にコーヒーで豆大福を食すってこともありました。それがきっかけで僕もコーヒーはブラック派になっちゃいました。貸しスタジオとは全然違う話になってしまったがまあ、いいか。


貸スタジオでの幸せは1つではありません。別の幸せを次回に説明します。では、次回にまたお会いしましょう。


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