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  第62夜 我が心のジョージア(Georgia on my mind)

【ブルージーなメロディ】
 有名なジャズのスタンダード曲、「スター・ダスト」を作ったホギー・カーマイケルの手による作品。確か故郷の恋人の思いを綴った歌だと思います。ブルージーなメロディが僕の心をくすぐります。無理なくすっと抵抗なく入ってくる感じで心にしみる名曲って感じがします。たまに頭の中に「ジョージア」のメロディが思い浮かぶことがあります。小さな幸せを感じられるなあ。


【ジャンルを超えて取り上げられる曲】
 この曲はジャジーにサックスやボーカルで演るパターンが一般的ですが、ブルージーなメロディが受け入れられてブルースやロックの人もよく取り上げていて演奏するのを耳にしたことがあります。有名なのが「レイ・チャールズ」や「ウィリー・ネルソン」が歌った録音とかがあります。ジャズ屋もロック屋もブルース屋も知っているという珍しい曲です。ミュージシャンの「みんなの歌」って感じかな。普通ジャズ屋とロック屋は演奏する曲自体が違います。共通に演奏できそうなものというとブルースが思い浮かびますが例えばジャズ屋が演奏するブルースに合わせてロック屋が演奏するのはできそうなようで難しいかも知れません。コード進行が微妙に違うしリズムもまったく違います。ロック屋は乗りが違うので多分気持ちよく弾けないでしょう。ところが速度の遅い「ジョージア」だったら乗りの違いは多少緩和されるのでひょっとしたら何とか一緒に納得のいく演奏ができるかもしれません。どちらもよく知っている曲だし。異文化の参入でかえって他では味わうことの出来ない面白い演奏になるかも知れませんよ。誰もが知っている曲だからこそそういう可能性も生まれてくるわけです。


【僕の歌と感じられるようになって】
 ところでこの曲は最近、僕の弾き語りのレパートリーに加わりました。僕自身も昔から知っていた曲ですが何となく敬遠していました。実際のところ若造が歌っても様にならないかも。若い頃歌っても「僕の歌だ」という感覚は正直あまり感じられず何となくピンと来なかったんですね。少なくともレパートリーにする歌はこの「僕の歌だ」と思える曲でないとなかなか練習にも身が入りません。年を重ねたせいか最近歌ってみてようやくそう感じられるようになりました。そういう気持になれば自ずと練習にも身が入り歌えるようになってきたというわけです。


【バースを歌う楽しみ】
 この曲はバースがあり僕の場合バースから歌うのが好き。意外にバース付きで演奏されている例は何故か少ないです。僕も最初は知らなくてミルド・レッド・ベイリーのアルバムを聴いてバースがあることを知りました。バースのメロディはテーマのメロディに勝るとも劣らない出来映えだと思うのですが何でみんなバース付きで演奏しないのか不思議です。ところで、この曲の持ち味は何といってもブルージーなメロディです。そこはちょっとこだわりがありとことんブルージーに歌いたくなってしまいます。音楽のジャンルでブルースってのがあります。このブルースで歌われるシャウトを交えた迫力のあるボーカルスタイルは黒人ならではの趣がありちょっと別世界を思わせます。そういうフィーリングを交えて歌いたいなあという憧れみたいなものがあるんですね。きれいに歌うのは嫌。シャウト気味にワイルドに歌ってみたいと思うのです。


【7thコードが似合う曲】
 不思議なものでこういう歌い方をする場合全部ではありませんがmaj7コードはどうしてか雰囲気が合いません。7thコードにこだわって伴奏してしまいます。面白いものです。ところで7thコードのようなブルージーなコードはいったい誰が発明したのでしょうか。ピアノでいうと1音だけちょっと半音ずらせばそうなります。いたずら好きなピアニストが面白がって演奏している最中に3度や7度の音を半音下げてみたらかっこよかった。そんな他愛もない発想からはじまったかもしれませんね、僕の想像ですけど。ところでこういうブルージな曲を伴奏する場合にピアニストがよく使うフレーズがあります。譜面にするとこんな感じ。


【3秒レイ・チャールズになれる時】
 このフレーズを覚えた時はほんとに嬉しかった。なぜって、僕は昔からブルージーなフレーズを弾くのが苦手だったからです。ブルージーな曲を演奏する時はいつも「ああ、レコードで聴くようなフレーズを僕は何で弾けないんだろうなあ。」と思いながらいつも弾いていた気がします。でも、このフレーズを弾く時だけはレコードで聴くときと同じ雰囲気にすることができます。すぐ戻っちゃいますけどね。こういうフレーズはクラシックにはない独特の感覚を持っていて実に魅力的なサウンドだと感じます。さっき紹介したフレーズは演奏するのに3秒位かかります。貴方も譜面をみてこのフレーズを弾いたらブルージーな音楽の世界をちょっと垣間見ることが出来るかもしれません。但し3秒だけですが....是非お試しを。 今日はこれでお終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:Hoagy Carmichael
作詞:Stuart Correll


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