【渋い映画といえば】
「映画の好きな人なら一度は観たことがあると思いますが、この曲は映画「カサブランカ」の中で歌われるジャズのスタンダードナンバーです。この映画にはボギーこと、ハンフリー・ボガードが主演しています。かつてCMで有名になった、女「昨日、どこへいったの?」、男「そんな昔のことは忘れたよ。」、女「これから、どうするの」、男「そんな先のことは判らないよ」という場面が出てくる渋い映画です。このセリフのやりとりは、物凄く気に入りました。心底「かっちょいい。」と思い一度でいいからこういう会話を交わしたいもんだと機会を待つこと20余年、まだこのセリフを交わせずにいます。
【ハンフリー・ボガードになりた~い】
とにかく、ハンフリー・ボガードが格好いいです。若い頃は、随分憧れて年をとったらあんな中年男になりたいなあと思っていました。残念ながら実現しませんでしたが......ところで、「As Time goes by」に話を戻しましょう。この曲が流れるのは、ハンフリー・ボガード扮するリックが、かつての恋人と再会する場面で使われます。数年前に二人は恋に落ち、リックお抱えの黒人ピアニスト、サムの弾く「As time goes by」をバックミュージックにして蜜月の時を過ごしたことがあったんです。ところが、ある日恋人はリックに何も告げることなく突然失踪してしまいます。絶望に苦しみ「何故だ」を自問するリック。それ以来、リックは二人の思い出の曲「As time goes by」を弾かないようサムに命じます。苦い思い出を思い出さないように....
【イングリッド・バーグマン】
恋人役はイングリッド・バーグマン。美しさはなかなか...。僕の友人がかつてこんな自慢話をするのを聞いた事があります。とある女優さんのファンだったのですが実際に間近で見る機会に恵まれたのだそうです。彼曰く、彼女を一目見て「ああ、僕のところに天使が舞い降りてきた。」と心の底から思ったそうです。元々大袈裟な奴だし好きな女優さんのことだからかなり誇張されていると冷ややかに聞いていましたが...。実際にTVで見るより間近で実物を見るとではその美しさも際立って見えるらしいのです。残念ながら僕にはそういう経験がないのでちょっと悔しい。話を戻します。
【封印された曲が流れる時】
ところが、リックの店に偶然かつての恋人がやって来ます。サムを見つけた彼女は懐かしさのあまり我を忘れ、サムに懇願します。「ねぇ、あの曲を歌って!」。サムは、拒否しますが彼女の熱意に負けてしぶしぶ「As time goes by」を歌い始めます。しばらくすると、リックが血相を変えてやってきてサムに毒づきます。「その曲は、弾くなと言っただろう!」。そこで、彼女と劇的な再会を果たします。てな具合に物語りは続くのですが、ストーリがこんな具合なので「As time goes by」はリックがやってきたところで中断され最後まで演奏されません。僕の場合、映画も見ますが、映画中の音楽を聴くことも楽しみの1つなのでそれが残念でなりません。ストーリーをちょっと変えてフルコーラス演奏するように作ればいいのにと思ってしまいます。それというのもこのサムの歌う「As time goes by」は実にすばらしい演奏だからなんです。個人的にピアノの弾き語りで歌うスタイルには思い入れがあります。(第4夜参照)そんなことも手伝って僕は何度もこの場面を繰り返し聴いて(見て)しまいます。
【極上の弾き語り】
「As time goes by」を訳すと「時の過ぎ行くままに」って感じでしょうか。最初ちょっととっつきにくいメロディだなと感じましたが、何回か聴くうちにだんだん好きになりました。この曲の歌詞の中にバースの部分で科学者の「アインシュタイン」が出てきたりして、普通の歌詞とはちょっと変わっているところも面白い。自分でも歌ってみたいなと思いはじめてちょっと練習してみたことがありますが、サムの極上の演奏とはほど遠くなかなかうまく弾けずくやしい思いをしました。
【男の格好よさがちりばめられた映画】
ちなみにこの映画の舞台設定は、第2次世界大戦中の北アフリカでの物語となっています。戦時中のお話なので色々考えさせられる場面も出てきます。結局、リックはかつての恋人とは別れることになってしまいます。ハッピーエンドの好きな僕としては少々残念ですが、男の格好よさが随所にちりばめられたこの映画はお薦めです。
では、また明晩お会いしましょう。
[関連情報]
作曲:Herman Hupfeld
作詞:Herman Hupfeld