音楽に魔法をかけよう
(ミュージック・マジシャンになろう)
2.7)トラブルに見舞われたら
~状況を把握して活路を見出そう
いい音楽作ってますか!
今日は、表題が示すとおり堅めのお話です。音楽と全然関係なさそうじゃんと文句をいわないで!ミュージック・マジシャンは孤独です。一人で音楽を作ります。或る日、いつも使っているソフトが正常に動かなくなったら、相談できる人は身近にいません。ですから、自分の身に降りかかった災難はなるべく自分で解決できる魔法を身につけねばなりません。僕が失敗した事例を読んでその必要性を感じて頂ければと思います。この魔法は一言で言えば「問題の絞込みと柔軟な観察力」ということができます。
- トラブルはいつも突然やってくる
- いつものようにパソコンを立ち上げ、「ラスト・ランデブー」という曲を仕上げようとした時にそのトラブルはやってきました。曲を再生してみて何か違和感を感じます。そう、MIDI再生のタイミングと歌のトラックのタイミングが微妙にずれています。多少のズレは許容範囲と許せますがそれは無視できない明らかにずれていることが判るレベルだったのでこのままでは先に進めなくなってしまいました。
- 糸口が見つからず立ち往生
- こういう経験は3年MIDIをいじっていますが初めての経験です。どうすれば、いいのだろうと天を仰いでしまいました。パソコンを再起動してもう一度再生してみましたが状況は変わりません。メモリが足りないとかそういう問題とは別次元のトラブルのようです。この日は「ラスト・ランデブー」の編集は諦め、他の曲を作ることにしました。しかし、このままほっておいても「ラスト・ランデブー」は永久に編集できないことになってしまいます。インターネットで同じような事例がないか調べましたが、なかなかみつかりません。ほんと、この時は困りました。こういう時、貴方はどうしますか?さらに悪いことに「ラスト・ランデブー」は伴奏がビッグ・バンド編成なので作り直すとした場合とてつもない時間を浪費することになります。
- 状況に向き合って現状を把握する
- 色々考えた末、まずは状況を整理することにしました。パソコンを立ち上げなおしても状況は変わらないことから何か異常なデータが混入してタイミングがずれるようになってしまったのではないかと推定してそのゴミを見つけて削除することができれば復旧するのではないかと考えました。まず最初に試したことは、MSSのファイル中にあるMIDIデータをイクスポートしておきファイル内のMIDIデータを一旦削除、その後先に保存したMIDIデータをインポートしたら復旧するのではと思い試してみました。残念ながら結果は変わりませんでした。ここで考えてみましょう。MIDIとオーディオとどちら側がずれているのでしょうか。それがわかれば随分調べる範囲を絞れることになります。オーディオ画面とMIDIの画面を見比べてみることにしました。
- いつもと違うことを発見することが解決の糸口
- ここで、1つ奇妙なことがわかりました。MIDI画面で最初の1小節目の感覚が他の小節の間隔より微妙に長いのです。片やオーディオ画面のほうは綺麗に全小節等間隔になっています。どうも、MIDI側に問題がありそうだと思えます。オーディオのほうは考えるのを止め、MIDI画面に絞って検討を進めることにしました。MIDIのどこかが悪いということがわかりましたが、これからどうすればよいのでしょうか。先ほど見つけた1小節目が微妙に長いようにMIDIデータを設定するためにはどう設定したらいいんだろうと考えてみました。取り敢えず、イベント画面を開いてみます。1小節目になんか変なデータがはいっていたら起こるかもしれません。各楽器の1小節目をみてみます。楽器の種類の指定、ボリュームの設定、リバーブセンドの設定など楽器の音色を制御する初期データが入っていますが、1小節目が微妙に長くなる要素は入っていません。ちょっと考えてみました。小節の長さが変わるということは何を意味するのでしょうか?1小節目の速度が他の小節より遅ければ長くなるのではないかと気がつきました。どうも鍵はテンポトラックにあるようです。テンポトラックのイベント・リストを開いてみます。
- ついに辿り着いた真相
- 上の絵がテンポ・トラックのイベント・リストです。1つテンポイベントが入っています。他にゴミらしきものはありません。しかし、ここの中にゴミが混入しているとしか考えられません。もうここまでか。全部作り直すかとの思いがよぎりましたがもうちょっと悪あがきをしてみようとここで粘ること数分....どうですか?気がつきましたか?そう、テンポ・イベントが設定してある位置が問題だったのです。1:1:0ではなく1:2:0になっています。ですから1:1:0~1:2:0の間は規定値の120で、1:2:0以降はこの曲の本来のテンポである140で動作する設定になっています。1:1:0にテンポイベントを置けば最初から140で演奏されるので小節の間隔も元に戻りそうです。早速データ変更をして再生すると元通り同期が取れてMIDIとオーディオが再生されました。作り直さなくてほんとによかった。
- 後書き
- これは、僕が実際経験した実話です。何故、テンポトラックに1:2:0という中途半端な位置にデータがあったのか疑問に思われた方もいらっしゃるかも知れません。MSSはなにかの拍子でテンポトラックのデータが消えることがあります。一度消えると設定した速度は曲ごとにメモしているわけではないのでこれくらいだろうと適当に値を入力してもとの値を試行錯誤で割り出す必要があります。再びテンポ・トラックのデータが消えて同じことをするのは馬鹿馬鹿しいということで1:2:0にも同じ速度イベントを過去に入れておいたのです。今から思えば置く位置がよくなかった。1:1:0に2つデータを挿入しておくべきだったわけです。結局自分でよかれと設定したデータが災いして今回のトラブルの問題を複雑化してしまったともいえますね。とにかく、問題をしぼりこみいままでと変わったところを見つける観察力でなんとかトラブルを収集することができました。どんなトラブルが起こっても手法は同じスタンスで対応することが出来ます。お互いトラブルを収拾できる魔法の力を日々磨き、トラブル解決の達人になれるよう頑張りましょう。
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