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お気に入りの音楽 千夜一夜       


  第100夜 ドント・イクスプレイン(Don't explain)

【深い悲しみ】
 誰でも悲しい思いをした経験があると思います。が、悲しみの深さは人によってまちまち。この曲は底知れない悲しみがテーマ。女性、男性どちらが歌ってもいいように2種類歌詞が用意されている曲なのである。一部を紹介すると男が歌う場合、「Don't cry,don't lie……Don't explain.」と歌う。女が歌う場合は男が凍りつく内容でこうだ。「Skip that lipstick……Don't explain.」。ちょっと、説明すると「あなたの口に付いた口紅のことは無視してあげるわ。もう言い訳はしなくていいわよ。」。浮気相手の口紅を付けたままのほほんと帰って来る旦那もどうかと思うが普通はそこが焦点になり喧嘩になるような気がするがこの歌ではそうならない。浮気をした相手をなじるのは充分すぎるほどやり尽くしたのでそれを通り越して「言い訳しなくていいわよ。」と言う訳です。ここに至るまでには二人の間に長ーい紆余曲折があったことが想像されます。イザコザがあったでしょう、ケンカもあったでしょう。で、行き着いた先が「言い訳はしなくていいわよ。」という感じでしょうか。


【生々しさ】
 この曲には飾る必要のない生々しさがそこら中で顔を出し、悲しいだけじゃなく痛いって感じるぐらいの悲しみの深さです。真偽のほどはわかりませんがビリー・ホリディが自分の経験した実話を歌にしたらしいと何かに書いてあったような?。その意図通りズンと生々しく悲しみが迫ってくる感じがします。聴けば聴くほど痛々しい。


【歌を作る意図】
 この曲は自分の体験した悲しみを表現したくて作られたと想像しますがこの曲のように意図通り、その曲に悲しみが備わるかどうかは作ってみなければわからないものだと思うのです。僕個人が聴く限りこの曲には痛いほどの悲しみを感じます。備わっちゃうんだから素晴らしい才能ですよね。曲が生まれる時は色々なキッカケがありますがビリー・ホリディが計算尽くで作ったとはとても思えない。歌を作ると言うよりは苦しい思いをして言葉を吐き出したから悲しみが乗り移ったのかも知れません。苦しくて言葉を考えることで悲しみを紛らわそうとした、その結果偶然この名曲が生まれたというほうがあたっているかもしれません。


【サビのメロディ】
 この曲は歌詞の生々しさが独特の世界を作っているところが大きな特徴ではありますがメロディも歌詞の内容を引き立てる悲しみに満ちたフレーズです。特にサビのメロディには心惹かれます。実に切ない。どうやったらこういうメロディを思いつけるんだろうと考えてしまいます。


【歌伴】
 たまにこの曲を歌伴することがあります。ついつい歌を聴いてしまい歌伴に集中できません。笑)なるべく音を減らし1音1音丁寧に弾く様にしたらもっと雰囲気が出るようになるかもしれません。ビリー・ホリディが苦しんだ片鱗だけでも表現できたらいいなと思うのですが本当に出来るようになるには沢山時間がかかりそうですね。今日はこれでおしまい。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:Arthur Herzog Jr
作詞:Billie Holiday


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