【「二人の世界」...】
この曲、かわいらしいスタンダード・ジャズのラブ・ソングです。僕の歌える数少ない曲の1つです。「二人の世界」という感じのハッピーな曲で歌うとちょっとウキウキしてしまう感じ。ただ、僕はひねくれているので「ケッ、何言ってんだい」という気持ちが沸き起こってしまいます。何故か素直に共感できません。これスキャットを練習するつもりでよく歌います。コード進行は僕とフィーリングが合っているのかこの曲でスキャットを歌うと次から次へフレーズが湧いてくるって感じになるのでとても歌い甲斐があります。
【能天気な歌詞にチャチャを入れたくなる】
この曲は歌詞の内容がちょっと能天気なんじゃないのかと文句を言いたくなるくらいハッピーな曲です。大袈裟な表現が出てくるのですが例えば「ジブラルタル海峡が埋まってなくなってもロッキー山脈が崩れ去ってなくなっても僕らの愛は変わらない。」なんてくだりが出てきます。僕は意地悪なのでジブラルタル海峡が埋まってしまうほどの途方もない規模の大地震が来たらとてもこんな悠長なことはいってられなくなるだろうとつっこみを入れたくなってしまいます。そうは思うのですがまあそれだけ高い心意気を持ってると良い方向に解釈すれば理解できなくはないかな。世の中の出来事を悲観的にひねた目で見ているよりは建設的でいいののではないでしょうか。人間どうせ生きるのなら少しでも多く幸せを感じて暮らしたいものです。歌詞は英語なので救われているのかもしれません。日本語だったら赤面して歌えません。「ケッ」と言ってしまいたくなることでしょう。
【この曲との出会い】
ところで、この曲は大学に入ってジャズを始めてから暫くして知った曲です。気の知れたメンバーとある日セッションした時にこの曲の譜面を持ってきた人がいて演奏してみたのですがメロディもコード進行も一遍で気に入ってしまいました。早速譜面を借りてワクワクしながら練習したことを覚えています。気に入った曲は色んなことを試してみたくなります。ピアノだったら何回も弾きたくなります。弾くのに飽きてくると歌も練習してみようという気になり珍しく慣れない英語の歌詞を見ながら歌を練習してみる気になるから不思議です。気に入った曲だからこそそういう気持ちが湧いてくるんだなあとしみじみ思います。努力の甲斐あってまがりなりに歌えるようにはなりました。しかしこの頃の僕は「自分は歌い手だ。」という自覚はまるでありませんでした。ピアノをうまくなりたいという想いが一番強く歌をうまくなりたいとかにはほとんど興味がありませんでした。だから歌えるようになった時点で満足してしまいそれ以上の発展はありませんでした。
【歌い手の自覚】
その後暫く時が経ちふとしたきっかけで弾き語りを練習してみようと思い立ったことがありました。この時を境に僕の音楽の中で歌というものが重要性を帯びていくことになります。会社に就職しサラリーマンになるとやはり仕事中心の生活が続き音楽は次第に休眠状態になっていきました。音楽も長い間続けているとマンネリ化してきます。心ときめかなければ練習しようという気持ちは上向かないものです。随分長い間そういう状態が続きましたがMIDI(色々な楽器の音を演奏する魔法の箱)を購入したのをきっかけに昔憧れたコーラスをやってみたくなり一人バンドというのを始めました。が、この音楽の作り方は僕にとっては最適だったようで音楽の虫が目を覚まし音楽活動を本格的に再開するようになります。飽きっぽい僕が飽きずに何年も一人バンドを続けられているのはよほど性に合った音楽スタイルなんだなと実感します。人間どんなに忙しくても心の底からやってみたいと思うことは何とか時間を絞り出して実行しようとするものです。
【一人バンドで自覚が各個たるものに】
一人バンドは正に僕にとって心の底からやってみたいことだったんです。もう少し具体的に説明すると一人バンドはMIDIでバンド演奏を作りそこに多重録音で僕の歌を録音してコーラスを加えれば僕の好きな「マンハッタン・トランスファ」みたいな音楽が作れるというわけです。一人バンドはコーラスがはいるので歌を歌わなければ作品が完成しません。それも多重コーラスのパートを一人4役で歌わなければならないので歌を沢山録音するために毎週貸しスタジオに通い歌う習慣がつきました。以前に比べると歌う時間が多くなったのに比例して弾き語りを始めて芽生えた「僕は歌い手だぞ。」という意識が一人バンドを始めたことで成長し今となっては歌なくして僕の音楽は語れないというぐらい大きな割合を占めるようになりました。
【歌うのはとても楽しいこと】
最近は昔から親交のある銀座パナシェのオーナー「サチサン」のつてでこの店に暇さえあれば歌いに行くことにしています。一人バンドの伴奏とは違いピアノで伴奏してもらって歌を歌うのはコール&レスポンスの要素があり楽しくて楽しくてしょうがありません。いつまで続けられるか判りませんが出来る限り続けていきたいと思っています。当然、「アワー・ラブ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」も銀座パナシェでよく歌います。今日はこれでお終い。
では、また明晩お会いしましょう。
[関連情報]
作詩:Ira Gershwin
作曲:George Gershwin