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お気に入りの音楽 千夜一夜       


  第69夜 ドライブ・マイ・カー(Drive my car)

【ヒットしなかったが好きな曲】
 ビートルズの大好きなロック。あまりヒットしなかったけど好きですねえ、この曲は。アルバム「ラバー・ソウル」の1曲目です。この曲のイントロを聴くと音楽を聴く準備が自然にできるという感じがして聴く気満々になります。この曲は色んなところで色んな工夫がしてあるなと感じることが多いです。


【変な音程のメロディ】
 例えば、初っ端に歌が入る音程がキーがCとした場合、Fから入ります。これはかなりへんちくりんです。コードで表せばC7なので普通ならC,E,G,Bあたりの音からはいりそうなものですが期待を裏切られFと来たかって感じなんですね。無理やり当てはめれば11thのテンションということになるのですがジャズでもないのに11thを使っているロックって珍しいんじゃないでしょうか。不思議な音程の音を使っているのでちょっとエグい感じに聴こえます。でも、不快感はなく僕にとっては心地よいエグさです。何回か聴いているうちに大好きになってしまいました。もう1つ、変なのがメロディが単調で全部Fで出来ています。これがシャウトを交えたパンチのあるボーカルで歌われます。こういうところに用意周到に綿密な計算されたビートルズの曲作りの意志を感じ取れる気がします。まんまとビートルズの意志通りかっこいいと思ったファンの一人が僕というわけです。メロディは単純ですがバックでギターの複雑なリフが演奏されていてロックのサウンドとしては実に完成度の高い緻密な仕上がりになっていると思えます。


【偉大な楽器カウベル】
 ところで、この曲で重要な役割を担っている打楽器があります。リンゴのドラムはもともとあるとして何だと思いますか。それはカウベル。「何だ、カウベルか。珍しくも何ともない。」と思った貴方、この楽器の偉大さをもっと認識しても良いと思います。「ドライブ・マイ・カー」でもカウベルは複雑なリズムを叩いているわけでもなく単純に4分音符の頭を叩いているだけです。しかしこれがあるのとないのとではサウンドに大きな差が出てくる気がしてなりません。特別にきらびやかな音というわけではなく「コン」という朴訥な音ですよね。単音で聴いていると何の変哲もない音のような気がしますが、「ドライブ・マイ・カー」のサウンドの中で聴くとピッタシカンカンです。リズムがシャキっとする気がします。不思議な魅力のある楽器です。


【ロックらしいピアノが珍しい】
 この曲のサビの部分では新たにピアノが参加してきます。昔から思うのですがロックとピアノって相性が悪いと思いませんか?ピアノの音ってクラシックのものという印象があるのか弾き方を相当工夫しないと浮いてしまう気がするのです。方やギターの場合不思議なことにうまく弾こうがへたに弾こうがロックらしく聴こえます。ギターは鳴らすだけでロックという感じがするのです。ところがピアノの場合は音自体がロックらしくなりません。さらに言うとキーボード類は同じ傾向があるかも。ただ弾くだけでロックと感じられるのはオルガンのコード・バッキングぐらいのものです。昔から雰囲気のアンマッチなロックの中で奏でられるピアノを聴いた思い出が何故か多いのでよけいそう感じてしまいます。ところが、ビートルズで聴くピアノは決して多くはありませんがどれもなかなか曲の雰囲気にマッチしていてさすがだと感心することが多かったです。これも綿密に計算された努力の賜物という気がするのですが考えすぎでしょうか。だからとても非凡なクレバーな音楽って印象を持ってしまいます。


【エマーソンとの出会い】
 ロックにキーボードは馴染まない。小学校、中学校はそう思って音楽を聴いていたのですが高校時代にこの先入観を打ち破るキーボードプレイヤーに出会うことになります。それが「キース・エマーソン」でした。ELPというたった3人のグループなのにシンセサイザーを駆使して打ち出されるサウンドは完成度が高く群を抜いていたと感じられました。はまりましたよ、これは。クラシックの作曲家でムソルグスキーという人が作った「展覧会の絵」というピアノ曲があります。これをロックにアレンジしたELPの演奏を聴いてちょっと感動した覚えがあります。ロックの感性によく馴染んでいるなあと素直に感じられました。こう感心してしまうのは理由があります。この時期ロック・バンドとオーケストラが共演する等の色々な試みをしたレコードを聴きましたが僕みたいなロック坊やが聴いてもはっきり駄作と判る代物だったりしてこの手のレコードにはがっかりすることが多かったんです。思うにこういう試みはアレンジが命です。それもロックの良さとクラシックの良さが判る人がアレンジを担当して初めてうまく行く土台が築かれる気がします。さらにアレンジしようとする作品の勘所をうまく掴んだアイデアが出て初めて良い音楽が生まれる気がします。そういう点でキース・エマーソンのアレンジはクラシックのエッセンスをうまく掴んだ素晴らしいセンスを持っていたような気がします。高校時代は「キース・エマーソン」とともに過ごしたといっていいくらいでした。笑)真似をしたくて一杯コピーをしてピアノで弾いたりしましたが、思い出すと楽しい思い出です。 今日はこれでお終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作詩:レノン=マッカートニー
作曲:レノン=マッカートニー


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