【ビッグ・バンド愛好者】
この曲はあまり有名ではありませんが、一部のニッチな音楽愛好者からは熱烈に支持されると思います。具体的に言うと一部のニッチな音楽愛好者とはビッグ・バンドを愛する人達のことです。僕もその愛好者の一人です。一度ビッグ・バンドの迫力のある生の演奏を聴いたら貴方も仲間入りしたくなっちゃうかもしれませんよ。笑)
【ホーン奏者のために作られた?】
この曲は僕の所属してたビッグ・バンド・サークルでもレパートリーにしていました。この曲は正にビッグ・バンドの為に書かれた曲といっても過言ではないでしょう。それも特にホーン・セクションの魅力を引き出せるよう考えられた曲ということができます。初っ端からリズム・セクションなしのホーン・セクションの短いアンサンブルから始まります。リズム・セクションはすぐ入ってきますがホーン・セクションと掛け合いをするような決めのリズムがなかなかかっこいいです。リズムは4ビートでなく8ビートで演奏されます。曲中のいたるところでブレイクしますが、ブレイクのところでホーン・セクションのアンサンブルやソプラノ・サックスのソロが登場します。このようにホーン・セクションの魅力が満載という感じです。僕は管楽器は吹けませんがこの曲が演奏できる機会に恵まれたら心からときめきを感じるのではないかなと思えるほどホーンを意識した曲ということができるのかも知れません。
【サドメル】
ビッグ・バンドというとはるか昔のスィングの時代に活躍したグレン・ミラーやトミー・ドーシー楽団が頭に思い浮かびますがビッグ・バンドはその時代で衰退してなくなってしまった訳ではなく細々とではありますが現役で活躍しているビッグ・バンドがありました。その中の1つにサド・ジョーンズ=メル・ルイス・オーケストラがあります。略してサドメルって言ってましたね。一時ちょっとしたブームになったこともあります。ニッチなブームでしたが....そこらじゅうのビッグ・バンド・サークルが取り上げてみんな競ってサド・メルを演奏するみたいな、そんな感じ。このオーケストラは伝統的なビッグ・バンド・サウンドを土台にしていますがそこにテンションを多用したモダンなホーンのハーモニーがとてもユニークで新しい潮流を感じました。ピアノは僕の好きなローランド・ハナ。彼のピアノもサウンドに花を添えるって感じの演奏で好きだったなあ。「アス」はこのサド・メル・オーケストラのレパートリーでトランペッターであるサド・ジョーンズが作曲・アレンジしたと記憶しています。
【好きな曲の嫌いな部分】
という訳でこの曲は大好きな部分が沢山あります。ところが、嫌いな部分もあるんですよ。この曲は至るところでブレイクしますが、1箇所、エレベ(エレキベース)がソロをとるオイシいブレイクがあるのですがここで演奏されるベースのフレーズがどう聴いても「イモ」としか思えないのです。全然いけてません。そこに時代錯誤を思わせるワウをかけたリズム・ギターの冴えないカッティングが加わるともういけません。精神状態が悪い時は「ちょっと、いいかげんにしてくれ」と怒鳴りたくなってしまう情けない演奏と思えてなりません。腕は超一流のジャズ・ミュージシャンなのですが適材適所ということなのでしょうか。ソウルやファンクでひたすらリズム命で演奏するプレイヤーのリズムのドライブ感には遠く及ばないと思ってしまうのです。心ときめかないのです。不思議なものです。
【自分でも演奏してみたいが】
この曲は最後までホーン・セクションをフューチャして終わります。フィナーレに相応しい最後のリフも最初はユニゾンから始まりノーマルなハーモニーに発展します。で、これで終らないところがサド・ジョーンズの偉いところなのですが段々エグいテンションが加わっていって何のコードを吹いているのかわからないぐらいグチャグチャのハーモニーに行き着いて終わります。サド・ジョーンズのアレンジに心奪われます。この曲はビッグ・バンドで演奏しなければなかなか生える演奏は出来ないと思いますが自分なりに何かの形で演奏してみたいと憧れる曲です。何か良いアイデアが思いつけばなあ。今のところ「こうすれば良い」という名案は浮かばないままですが、まあ焦ることはありません。いつの日かグッド・アイデアの音の洪水がいつの日か僕の頭の中に響き渡る日を待つこととしましょう。今日はこれでお終い。
では、また明晩お会いしましょう。
[関連情報]
作曲:Thad Jones