お気に入りの音楽千夜一夜 お気に入りの音楽千夜一夜 お気に入りの音楽千夜一夜 お気に入りの音楽千夜一夜

お気に入りの音楽 千夜一夜       


  第53夜 鉄道員のテーマ

【心に染みるメロディ】
 もの悲しい心に染みるようなメロディ。そんな言葉がピッタリという感じがするのがこの曲。しかしこの曲を聴いて素晴らしいと感じることがもう1つあります。それが、この曲のメロディを奏でるギターの音色。もし、この世にギターという楽器が存在しなかったらこの名曲が生まれることはなかったのではないか?そう思えるほどピッタリの組み合わせだと思うのです。この曲のメロディを爪弾くギターの音色を聴いているとついつい聴き惚れてしまいます。いや、ほんとに。ということで曲のほうはよく知っているのですが、映画のほうは機会がなくて実は見たことがありません。今の時代、その気になれば簡単に見たい映画が見れるようになって来ました。この映画も暇を見つけて見てみたいと思っています。


【ギターの色気】
 ギターが爪弾く音(ギターも色々ありますが、アコースティック・ギターのことを思い浮かべてくださいね。ロック・ギターを連想しても混乱するだけです。)には、この楽器にしか出せない独特の色気みたいなものを感じます。小さい頃から、ギターには親しみがあったのでよけいそうかもしれません。僕の父は、音楽好きで若い頃ギターを少し嗜んでいました。兄貴と僕も音楽は好き。ちょうどはやりかけていたフォークソングに触発され兄貴も僕もギターを弾きたがっていることを聞きつけて、若い頃弾いていたギターを父が譲ってくれました。そのギターは物置の奥に眠っていたこともあり、弦は錆びついてとてもすぐ弾ける状態ではありませんでした。父が新しい弦を買って来て一緒に弦を張り替えなんとか普通に弾けるようになりました。


【父に習ったギターの思い出】
 この頃はやっていたフォーク・ソングは、「ジョーン・バエズ」、「ブラザーズ・フォー」、「ピーター・ポール&マリー」などをよく聴いてました。それで僕もフォーク・ソングで弾くストローク奏法(6弦全体を手で弾いて伴奏する弾き方)を弾いてみたくてCだとか、G7などの基本的なコードを一生懸命覚えました。でも、そういう風に色々弾けるようになるまでには基本的なことを色々教えてもらう必要があります。子供の頃ですからどう調弦するかもわかりません。その手解きをしてくれたのがやはり父でした。「もう、忘れちゃったよ」と言いながらフレットの抑える位置はこの辺だとかギターを弾くための色々な基本的なことを一通り教えてくれました。


【制約の中から生まれる美しさ】
 ギターの弾き方というのは、抑えたり引っ掻いたり独特な奏法が多い楽器です。ピアノはキーを押すことで音が簡単に出ますが、ギターはそうはいきません。フレットの抑え方が不十分でも、弾き方がへたくそでも綺麗な音は出ません。そういう制約があるからこそ、ギターならではの曲が生まれたのじゃないかなと思ったりします。例えば、「禁じられた遊び」、「第3の男」、「アルハンブラの思い出」などは正にそう感じます。「アルハンブラの思い出」を初めて聴いた時はちょっと感動しました。この曲は1本のギターで完成されたサウンドになるよう、さらにギターというピアノに比べたら制約のある楽器でうまく弾けるよう用意周到に緻密にアレンジされた正にギターのための楽曲と感じました。この曲を作曲したのはタルレガ。スペインの作曲家です。メロディが3連のトレモロで演奏されますが、これこそギターならではの光り輝くような素晴らしいアレンジです。どうやって思いついたのでしょうか。ほんとに感心してしまいます。メロディをトレモロで演奏するアイデアのお陰でギターで完全なサウンドとして聴けるようにも、ギターという楽器で演奏できるようにすることも成功したのではと感じられます。(ギターで弾けるようにと簡単にいいましたが、これを上手に弾くにはギター奏者の超絶テクニックが要求されます。決して簡単に弾けるわけではありません。念のため付け加えます。)正に奇跡のような曲なんです。


【ブランデーでも飲みたくなる雰囲気】
 ところで、ギターの奏でる和音の響きって心惹かれませんか。例えば、ジャズ・ギタリストが演奏するコードが醸し出す雰囲気はしびれちゃうなという感じです。例えば、ジム・ホールのソロ・アルバム「バチュオーソ」なんて聴いているとブランデーを片手に夜の一時を過ごしてみたい、いや昼間でもウィスキーを飲みたくなる、なーんて思ってしまいます。でも、僕は、体を壊している身でお酒はあまりよろしくないので、思うだけで実行に移すことはほとんどありませんが....。何でこんなに魅力的な音が出るのでしょうか。ピアノでは、どう頑張ってもこの微妙な味は出せそうにありません。思うに、ギターの弦は6本あります。ピアノと大きく違うのが色んなポジションで同じ音程の音が出せるという特徴があります。ギターで一番太い弦を弾くとEの音が出ます。フレットは半音刻みでついているのでこの弦で5番目のフレットを抑えるとAの音が出ます。ところが、次の弦を開放弦で弾くと同じAの音が鳴ります。かたや、ピアノの場合、同じ音程の音を出すには同じキーを押すしかありません。こういうのは冗長なだけじゃないかとおっしゃる方がいるかもしれませんが、そこにしびれる雰囲気を出す秘密が隠されているかも知れませんよ。とにかく不思議な魅力を持った楽器です。


【息子に手解き??】
 最近はギターは弾かなくなってしまいました。たまに懐かしくなり奥から引っ張り出して弾いてみたりすることがあります。弦を押さえるとすぐ手が痛くなってしまいますが、その痛みから小さい頃父にギターの手解きをしてもらった時の手の温もりを思い出します。今、思えばとても幸せな少年時代を過ごしたんだなってね。その父ももう他界してしばらく時が経ちました。今度は僕が娘や息子にギターの手解きをする番ですが相手がその気にならなければそれも叶わないですよね。こういうことは押し売りしては逆効果です。僕が子供達にギターの手解きで手の温もりを伝えられたら、2代続けての父から手解きということになり最高なのですが、子供達が「お父さん、ギター教えてよ」と言って来るまでまあじっと待つことにします。今日はこれでお終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:調査中



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