【別格扱い】
ビートルズの作った「ロックン・ロール・ミュージック」を初めて聴いたのは僕が小学生の時でした。なぜかビートルズの他の曲と少し毛並みが違うと感じて何となく別格扱いにしていた曲です。毛並みが違うと感じたのは、例えば次のようなことも理由の1つかもしれません。ビートルズの曲は大抵ジョン、ポール、ジョージによる3声のコーラスで歌われることが多いのですが、この曲の場合コーラスは一切入っておらず終始ジョン・レノンのソロで歌われます。また、ここも珍しいことですが、ピアノを伴奏の中心にしてアレンジが施されています。いつもはギター中心が多いのにちょっと変わっていますよね。
【神懸かったロック】
しかし、そういう要素を除いてもやはり何かが違います。別の言い方をすれば「神がかった」と表現すると大袈裟かもしれませんが半端ではないそんな気持ちを抱かせる何かがああります。「俺が世界一のロックン・ロールを作ってやる。」、そんな意気込みが伝わってくるような気持ちを抱かせます。ところで、この曲はロックの尺度で測った場合、「神がかる」と表現しても僕自身違和感はありません。しかし、この曲をクラシックやジャズの尺度で測るとあまり良い評価を受けないような気がします。価値観が全然違うので致し方ないことかも知れません。
【チャック・ベリー】
この曲がビートルズのオリジナルではなく「チャック・ベリー」が作った曲だということは、随分後になって知りました。この曲を作ったチャック・ベリーもジョン・レノンも筋金入りのロック野郎どもです。チャック・ベリーの曲だということを知ってこの曲を聴いてみるとジョンはチャックに対する尊敬のような憧れのような気持ちを持っていたのではないかと思います。それを前提に考えるとジョンがソロで歌っていることも、ピアノ主体で伴奏を組み立てていることも納得がいきます。要するにジョンはチャック・ベリーのオリジナルの演奏の気に入ったところはなるべく忠実に再現した上で自分なりの「ロックン・ロール・ミュージック」を作ろうとしたんじゃないかと考えれば辻褄が合ってきます。あくまで僕の推測ですが。チャック・ベリーのオリジナルの演奏はつい最近になって初めて聴きましたが、ビートルズの演奏にそっくりです。
【聴いた順番が逆】
いや、逆でした。ビートルズの演奏はチャック・ベリーの演奏をかなり忠実に再現して出来上がっているなあと感じました。ところで、ジョンはこの曲のどこが気に入ってビートルズで演奏してみようと思ったのでしょうか。僕も一応ミュージシャンの端くれです。よい曲に出会うと僕もその曲を自分でも演奏してみたいという気持ちになりますが、ジョンもチャック・ベリーの「ロックン・ロール・ミュージック」を聴いてそういう気持ちになったんだろうと色々思いが巡ります。僕自身もいいなと思う音楽に触れたときにまず感じることが「僕も同じようにそっくりに演奏してみたい」という素朴な憧れです。そっくりそのまま演奏することをオリジナリティがないと忌み嫌う人もいるかもしれませんが、僕は別に悪いこととは思いません。
【そっくりに真似すること】
そっくりそのまま演奏するということは、自分が良いと感じたものを自分の表現力で演奏してみることということができます。自分がよいと感じたことを実際に音楽として奏でて再現するいうことは、自分に表現する能力が備わってなければ真似することは出来ません。言い方を変えればうまく真似出来たということはその音楽のエッセンスを自分に取り込んだに等しいということもできます。そこには歌い回しのテクニックが含まれていたり、新しい音の重ね方を発見したりということが含まれるかもしれません。そういうものを含めて実際に同じ音の場を作る力が備わっていく気がします。音楽を聴くだけの人から見れば猿真似と写るのでしょうが憧れた音楽を再現するのは自分がその好きな音場を実際に作る力を獲得するのですからミュージシャンにとっては重要な練習と思うわけです。まあ、人前で音を出すときは考慮する必要があるかもしれませんが....
【いかしたイントロ】
忠実に演奏を再現しているといいましたが、イントロはオリジナルもビートルズのテイクも同じフレーズから始まります。譜面にするといやにあっさりしています。こんな感じです。
しかし、この単純なフレーズがいいんだなあ。ロックのエッセンスをビンビン感じてしまう、そんな極上のフレーズです。ほんとかよと、のたまう貴方!譜面じゃわからないです。イントロだけでもいいから聴いてほしい。これがロックの真髄だと叫んでしまいたくなるぐらいです。どうやって思いついたのでしょうか。うらやましい限りです。今日はこれでお終い。
では、また明晩お会いしましょう。
[関連情報]
作曲:チャック・ベリー
作詞:チャック・ベリー