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お気に入りの音楽 千夜一夜       


  第49夜 キャンディ(Candy)

【きっかけはマントラ】
「キャンディ」。かわいい名前のこの曲は、ジャズのスタンダード・ナンバー。恋人のことを「貴方は、甘いキャンディみたい」と「キャンディ」に例えて歌う、まあベタベタのラブソングってとこでしょうか。この曲を気にし始めたのはマンハッタン・トランスファが歌うテイクを聴いてから...ギター1本の伴奏の上に展開されるコーラス・ワークは完璧な上に何ともいえないジャズの粋な雰囲気が加わり非の打ち所のない演奏と感じました。


【夢は膨らみ続け】
 コーラス好きな僕は一辺に気に入ってしまい憧れてしまいました。僕もこんな音楽を実際に奏でてみたいなあってね。マンハッタン・トランスファのキャンディを何度も聴く度にその思いは高まっていきます。昔からコーラスと名がつくものは大好き。コーラスが作り出す独特の響きに魅せられるのでしょうか、いつも聴くとうっとりしてしまいます。猫にマタタビ、Metamorphosis-Oneにコーラスという感じでとにかくコーラスには目がないんです。ジャンルは、特に厭いません。教会で歌われる賛美歌も、TV番組「ハモネプ」で色んなグループが歌うアカペラも楽しく聴くことができます。ところで、人にもよりますが好きなことって自分で所有したくなったり、真似したくなったりなるものですよね。ということでキャンディを聴き続けているうちに、いてもたってもいられなくなり僕でもできるキャンディを真似する方法を真剣に考え始めていました。一言、真似するといっても相手がマンハッタン・トランスファとなると簡単にはいきません。マンハッタン・トランスファを真似するためには僕の他に3人のボーカリストを集めねばなりません。それもコーラスの超絶技巧を持っている人をです。これはどう考えても今の僕の乏しい人脈で集めることはとうてい叶えられそうにありません。しかも、あの超難しいコーラス・ボイシングをコピーできるかも自信はありませんでした。問題は山積み。困り果ててしまいました。


【100点でなくてもいいから】
 このままでは、一生僕の夢は果たせそうにありません。悩んだ末、ちょっと考え方を変えることにしました。マンハッタン・トランスファみたいに4人でコーラスするのはきっぱり諦めデュエットでコーラスすることにすればどうかなと思いつきました。そうして色々工夫してキャンディのあの雰囲気を出せるようなアレンジを考えることに力を注げばひょっとしたらできるようになるのではという気がしてきました。4声のボイシングはどうすればよいのかまったく検討がつきませんが、デュエットなら2声分のコーラスを上手に考えれば実現できそうです。メンバーも一人確保すればよくこれも何とかなりそうな気がしてきました。ということでピアノに向かって僕が歌う予定の2ndパートを考え始めました。たった2声だからそう難しくないのではと期待しましたが、思っていたほど甘くはありませんでした。2声でコーラスする場合、3度と6度を基本にボイシングするとよくハモることは、経験上知っていました。が、これだけでは工夫がありません。これだけのアレンジではただ、ハモっているだけのつまらない譜面になってしまいます。マンハッタン・トランスファのテイクのような粋なジャズの雰囲気の微塵も感じられません。それから暫くピアノと格闘しました。考えが煮詰まるとマンハッタン・トランスファのオリジナルを聴き直して構想を練り直してまたピアノと格闘する。そんなことを1週間ぐらい続けて何とか譜面を書き上げることができました。しかし、ただ聴いているのとこうしてアレンジしようとして聴くのとは集中力が全然違います。オリジナルのテイクを聴く度に微妙にメロディをフェイクしたりすると雰囲気がでるんだなと気がついたり、途中のコード進行が4分音符毎に半音ずつ上がったり下がったりしているのに気がついたりと自分が今まで漫然と聴いていた部分で新たな発見をすることができて色々貴重な経験を得られた気がしました。


【苦労して書き上げた後】
 さて、譜面が出来上がると今度は実際に演奏したくなってきます。その頃、ピアノを弾いていた赤坂のPoPoというお店で知り合った森 美紀子さんにお願いしてデュエットをやってみました。苦労した甲斐あって、僕が思い描いたものに近い演奏ができて珍しくアレンジ的には満足のいく出来でした。このキャンディがきっかけでこの後、デュエットのライブをやろうということになり、赤坂PoPoでバンドを入れて本格的なライブを開催することになりました。この曲が呼び込んだ幸運と感じずにはいられません。


【Dreamyの誕生】
 この曲はもう1つ幸運を呼び込みます。同じく赤坂のPoPoでジャズ・ボーカルのfukumiさんの伴奏をした時のことです。お店のオーナーマダム・アンティック・サチさんが「あなた達、デュエットでキャンディやってみたら?」と声をかけてくれました。以前、森美紀子さんとのデュエットを思い出し何かピンとくるものがあったのでしょう。fukumiさんとキャンディをデュエットしてみることになりました。彼女もマンハッタン・トランスファが好きでこの曲のメロディはよく知っていたので特に練習なしでいきなり合わせました。で、ちょっと驚いたのは、彼女とは声の質が合うのかびっくりするほどよくハモるのです。サチさんは、本能的にそれを感じ取ったに違いありません。声をかけてもらえなければそんなことに僕自身気がつかなかった訳でとても貴重な体験でした。その後、銀座パナシェでfukumiさんと再開し、またデュエットしようよという話で盛り上がり「Dreamy」という名前のデュエット・グループが誕生しました。


【思い出の詰まった大切な曲】
 というように、幸運をもたらしたこの曲には強い思い入れがあります。元々は憧れに突き動かされてアレンジした譜面が色々な幸運を呼び込んだわけで知らず知らず大事に扱いたい曲です。今日はこれでお終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:調査中
作詞:調査中


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