お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタイン お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタイン お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタイン お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタイン

お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタインお気に入りの音楽 千夜一夜



  第38夜 マイ・ファニー・バレンタイン(My funny valentain)

【誰の演奏が一番好き?】
お気に入りの音楽千夜一夜 マイ・ファニー・バレンタイン ジャズのスタンダードナンバーで、バラードで演奏されることが多い曲です。名曲なので実に様々な「マイ・ファニー・バレンタイン」が演奏されています。ジャズのプレイヤーであれば取り上げていない人はいないくらいです。で、その中で僕にとって一番の「マイ・ファニー・バレンタイン」はというとちょっと迷ってしまいますが、しいて挙げればマイルス・デイビスの「マイ・ファニー・バレンタイン」になると思います。


【マイルスの2種類のテイク】
 マイルスは実に沢山の演奏を残していますがマイルス・デイビス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)のメンバーで録音された時代の一連の作品が好きです。僕は一応ピアノ屋さんなのでハービー・ハンコックの悪く言えば訳のわからない、よく言えば高度に抽象化されたクレバーな演奏に心惹かれてしまいます。このメンバーで演奏される「マイ・ファニー・バレンタイン」は、バラードで演奏されますがリラックスして聴くような通常のバラードではなくこの頃はやっていたモード奏法の影響もあり緊張感みなぎる内容になっています。ちょっと肩が凝りそうですがこの曲のハービー・ハンコックのピアノ・ソロには一時期はまったことがありお気に入りの演奏の1つです。マイルスの「マイ・ファニー・バレンタイン」は、もう1つ、まともな、いやもとい、スタンダードな演奏があります。この時代はちょっと過去に遡りマイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)のメンバーで演奏しています。「cookin'」というアルバムに収録されていますが誰が批評しても名盤と云われるぐらい評価の高いアルバムです。美しいピアノのイントロからはじまるのですが、好きだなあこのイントロ...


【バラードで演奏しない変り種】
 ところで、「マイ・ファニー・バレンタイン」は通常バラードで演奏されることが多いと書きましたが変り種で早いテンポで演奏されるものもあります。例えば、ビル・エバンスが演奏する、マイ・ファニー・バレンタインは一聴の価値があると思います。想像するに、通常のバラードで演奏するのはありきたりなのでそういう既成概念をぶちこわしてしまおうと考えたかどうかはわかりませんが、そう考えてアレンジを考えたんじゃないかなと....なんとなくそんな意図を感じさせる演奏です。早いミディアム・テンポの曲をピアノで演奏する場合、左手でコードを添えるように弾いて、右手でメロディやアドリブを弾くのが一般的な弾き方といえます。ところが、この曲でのエバンスはそういう弾き方をしません。コードは一切弾かず右も左も同じメロディをオクターブのユニゾンで弾くのです。一応、ああ、「マイ・ファニー・バレンタイン」だあとわかる程度にメロディを残しつつフェイクしたフレーズを1コーラス弾きまくります。ちょっと、かっこよさを感じてしまいます。


【例えればモノクロ写真】
 コードを一切弾かないアイデアから醸し出される雰囲気は独特で、写真で言えば、デフォルメした白黒写真のシンプルなイメージが頭の中に広がってきます。エバンスはピアノ・トリオで演奏することが多いのですがこのアルバムはギターのジム・ホールとのデュオ・アルバムになっています。二人が対峙して楽器を奏でる真剣勝負という趣です。ピアノに感化されてかギターもかなりアグレッシブに弾いています。通常、ピアノ・トリオの場合ベーシストが拍子の頭にコードのルート音を弾くのが一般的でそれが曲全体の安定感を生むのですがベーシストのいないこの曲の場合、表の音がない状態で裏から入ってきたりするので思わず拍子を取り損ねてしまいそうになってしまいます。そんな型破りな演奏が続くので全体に心地よい緊張感がみなぎった演奏になっていると感じます。こういうのもやりすぎると難解になり良い演奏と感じなくなってしまいますが、エバンスとジム・ホールによるこの演奏は僕にとって崩し加減がちょうど良いなと感じます。


【ジャズ喫茶への思い】
 大学生の頃、暇があればジャズ喫茶に入り浸り、マイルスやエバンスを聴いていました。最近、その頃のことが懐かしく思えてきて昔通ったジャズ喫茶を訪ねてみたりしましたが、月日は巡り閉店してしまった店が多くジャズ喫茶の件数がめっきり少なくなってしまったのは寂しい限りです。閉めた店が多い中でも現役でしっかり営業している店もあります。僕がたまに寄るジャズ喫茶が、桜木町の「ダウン・ビート」。どっと疲れた時などふと思い出してふらっと寄ったりします。僕の「男の隠れ家」みたいな存在かも。今後も元気に営業を続けていって欲しいもんです。


【ジャズ喫茶じゃなくてもコーヒ-が飲めるところ】
 ところでジャズ喫茶が懐かしいけど遠ざかってしまった人へ耳寄りな情報を1つ。ジャズ喫茶そのものではありませんがジャズを聴きながらコーヒーが飲める店があるのをご存知でしょうか?それが「Tully's coffee」。チェーン店なのでいたる所で見かけます。大抵どの店でもモダン・ジャズがかかっています。この間行った時はHerbie Hancockの「処女航海」がかかっていてちょっと嬉しくなってしまいました。但し、リクエスト(実際にリクエストして確認したわけではありませんが)はできないと思います、念のため...ジャズ喫茶に行けなくて不満を抱えている人は一度お試しあれ!今夜は、これくらいでおやすみなさい。また、明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作詞:Lorenz Hart
作曲:Richard Rodgers



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