お気に入りの音楽　千夜一夜

　　第３４夜　フランス組曲(Franzosische Suiten)

【バロックに魅せられて】
　バロック音楽って好きですか？僕の場合小さい頃、ハープシコードの美しい響きに魅せられてバロックを聴くのはとても好きだった覚えがあります。好きな要素は他にもあります。対旋律が生み出す一種独特の雰囲気や通奏低音（ペダルトーンともいう）の上に流れる華麗なメロディ．．．うーん、段々聴きたくなってきた。一番好きなバロック音楽って何だろう？バロックは好きといってもそんなに沢山聴いているわけではありませんが、バッハの「フランス組曲」は、一番好きかもしれません。

【初めて聴いて覚えた強烈な印象】
　この曲を知ったきっかけはもう覚えていませんが、ラジオか何かで初めて聴いて惚れてしまい、ピアノの譜面を急いで買いに出かけた記憶があります。ものぐさなぼくがそこまでするのですから、相当聴いた印象が強烈だったと思います。特にこの曲の第１楽章は好きでいつもろくに練習しない僕が、この曲弾きたさに毎日ピアノに向かいました。第１楽章のメロディは華々しさと物悲しさが交錯する素晴らしいメロディだと思います。バッハの作品で他に「イギリス組曲」という似たような題名の曲があります。「フランス組曲」と同じぐらい素敵な曲なんじゃないかな？と期待感が日増しに高まってきます。或る日ＮＨＫのＦＭ放送で放送されるのを見つけワクワクしながら聴いた覚えがあります。残念ながら聴いた結果は芳しくなく殆ど印象に残りませんでした。曲名で期待しちゃあダメだということですね。楽想は同じような感じなのに不思議なものです。作品を作る時はどの曲も同じように丹精込めて作るのだろうけれど魂の宿る曲とそうでない曲ができてしまうのはしょうがないことなのでしょう。

【ハープシコード】
　バロック音楽といえば代表的な楽器にハープシコードというピアノの前身のような楽器があります。このハープシコードの音色には心惹かれるものがあります。ピアノの音と比べると少なくとも単音の音色で比較する限りハープシコードの音色のほうが数段好みです。バロックの時代には必ずと言っていいほどハープシコードが活躍しますが、ピアノが発明されてからは鍵盤楽器の主役の座を奪われ、なりを潜めてしまいました。

【ハープシコードが衰退した理由】
　あれだけきれいな音を出す楽器なのに．．．．ちょっと不思議です。手入れとか大変などの理由があったのでしょうか？理由は良く判りませんが残念です。（03.11/9追記）この後調べてみて次のことがわかりました。ハープシコードは楽器の構造上音の強弱を出しにくい楽器なんだそうです。片やピアノは弱く弾けば弱い音が強く弾けば強い音が出せるので表現力の点でピアノに軍配が上がったということです。

【黒鍵と白鍵の色】
　ハープシコードは実際弾いたことはありませんが見たことはあります。機会があるなら実際に弾いてみたい気もしますが今でもグランドピアノも買えない安サラリーマンなのでハープシコードなど夢のまた夢です。ハープシコードとピアノを見比べると気がつきますがピアノの白鍵の部分がハープシコードは黒鍵、ピアノの黒鍵の部分はハープシコードでは白鍵になっています。ピアノのそういう色合いに慣れ親しんでいる僕にとっては色合いが逆転しているので不思議な雰囲気を感じてしまいます。ピアノが作られたときなぜわざわざ色合いを逆にしたのか興味が沸きます。何か理由があるのでしょうが、面白いエピソードが発見できそうです。まだ、見つかりませんが見つけたらここに書き加えたいと思います。どんなオチになるか楽しみにしていてください。
（03.11/9追記）早速調べてみたのですがインターネット上にこんな記述をみつけました。「ピアニストの指をより白く綺麗に見せるために鍵盤の色を逆にした。．．．」ほんとかいなと、俄かには信じがたいのですがどうもそういうことらしいです。

【ハープシコードは実際には弾けないけれど】
　ところで、ハープシコードとの関わり合いはこれ以上はあるまいと思っていたのですがひょんなことから新たな出会いに恵まれることになります。きっかけはシンセサイザです。前にも書きましたが僕は１台だけシンセサイザを持っています。ＹＡＭＡＨＡのＤＸ－７という機種ですがこのシンセサイザという楽器は只者ではありません。プリセットといって予め色々な種類の楽器の音が沢山はいっています。ピアノやオルガンだけでなく、フルートやトランペットまではいっています。当時としては画期的な楽器でした。このシンセサイザに憧れのハープシコードの音が含まれていることに気が付いたんです。

【ハープシコードの音を満喫】
　僕はハープシコードは買える筈もなく「フランス組曲」は当然ピアノで弾きました。でも、もしこれをハープシコードで弾くことが出来たらなあと思う気持は叶えられないであろう願望として残っていました。ところで、本物ではないにしろ、９０％ぐらいそっくりなハープシコードの音がでる楽器が目前にあるわけです。お察しの通り僕がシンセサイザのハープシコードの音色で「フランス組曲」を心ゆくまで弾きまくったのは言うまでもありません。結局、ハープシコードを買って弾くことはできなかったけど９０％ぐらいの疑似体験ができたのでとても嬉しかったです。それに偶然見つけたからその分得した気がして小さな幸せを感じました。今夜は、これくらいでおやすみなさい。
　また、明晩お会いしましょう。

[関連情報]
作曲:JS.bach　　　　

　　　　　　御感想、御指摘等のご連絡は、までどうぞ