お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こう お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こう お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こう お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こう

お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こうお気に入りの音楽 千夜一夜



  第21夜 A列車で行こう(Take the A train)

【A列車ってどんな列車?】
お気に入りの音楽千夜一夜 A列車で行こう この曲は、デューク・エリントン楽団に沢山曲を提供したビリー・ストレイホーンが作った軽快なミディアムテンポのジャズのスタンダードナンバーです。ちょっと特徴のあるメロディが印象的なスウィング時代の名曲です。デューク・エリントン楽団による演奏が一番親しまれているかもしれません。A列車っていったいどんな列車なんだろうと素朴な疑問が長い間解消できずにいましたが最近仕入れた話によると、どうもニュー・ヨークで一番最初にできた地下鉄なのだそうです。だからアルファベットの最初の文字を取ってA列車というわけです。テンポ良い速度から車窓から景色を眺めながらウキウキした気分で「ハーレムにいくぞ」と意気込む姿とかを長い間想像していたので「なんだ、景色は楽しめないのか」などとくだらないことを思いついてしまいます。


【他は何もいらない凄いスキャット】
 ニュー・ヨークに行く機会があったら是非一度A列車に乗ってみたいと思う僕は変でしょうか?昔ニュー・ヨークの地下鉄は治安が悪くて危ないなんて聴いた記憶が微かにあるのですが今はどうなんでしょうか?行くことは殆どないのにそんなことを考えてしまいます。で、それはさておきこの曲を題材にしてスキャットで歌いまくる物凄いテイクを聴いたことがあります。スキャットを歌いまくるのはジャズボーカルの女王、エラ・フィッツジェラルドです。どう物凄いかというと乗りに乗りまくっているという感じで歌っていて1コーラステーマを歌った後、9コーラスぶっ通しでスキャットを歌いまくります。この手の曲は普通、1コーラステーマを歌い2コーラスぐらいスキャットを歌って、ピアノソロが1コーラスはいり、最後に1コーラスうたってお終いという構成にするぐらいが定番ですが、スキャットを9コーラスも続けるというのは尋常ではなく、普通はフレーズがネタ切れになってそうそう長くスキャットできるものではありません。譜面なしで、アドリブ(要するにその場で思いついたフレーズを歌うってこと)でやるわけですからエラの底知れぬ実力を感じざるを得ません。それで、この9コーラスは気を抜く暇がありません。次から次へと溢れ出るフレーズを聴いていると「ああ、確かにピアノソロなんか入れる必要ないかも」とつい納得してしまいます。出る幕無しと言う感じなんですね。一度は聴いてみる価値があると思います。


【ホールトーンのイントロ】
 さて、この「A列車で行こう」は、特徴のあるピアノのイントロから始まります。特異な音階を使っていてホールトーン音階と呼ばれています。普通、音階は半音と全音が入り混じって構成されますがこのホールトーン音階は全音だけで構成されます。要するにド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯という具合です。ピアノをお持ちならちょっと弾いてみてください。


【ホールトーンを使った曲】
 おや、気が付きましたか?どっかで聴いたことあるでしょ。そうそう、スティービー・ワンダーが作った「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オン・マイ・ライフ」のイントロにも使われているんです。例をもうあと1つ。アニメの鉄腕アトムのテーマソングのイントロもホールトーン音階から始まります。意外な共通点です。こういう身近な曲でも使われているので結構馴染みがあるかもしれません。


【ユニークなフレーズ】
 ところで、スティービー・ワンダーは「サー・デューク」という曲を作っていますが、サー・デュークはもちろんデュークエリントンのことを指します。エリントンの音楽に憧れ、尊敬し触発されてこの曲を作ったんじゃないだろうかなあと想像してしまいます。この曲の歌詞の面白いところはエリントンの他、サッチモ、ベイシー等の有名なジャズ・ミュージシャンの名前が沢山出てきます。日ごろからジャズに親しんでいた様子が窺い知れて楽しくなります。話がそれてしまいました。「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オン・マイ・ライフ」のイントロは順番に音階が上に上っていく作りになっていますが、「A列車で行こう」のイントロはもうちょっと複雑。是非エリントン楽団の演奏を聴いてほしいです。なかなかユニークなフレーズです。ジャズのフレーズはユニークなものが多いですがデューク・エリントンのフレーズはその中でも段違いにユニークです。ユニークなので、中には嫌いと言う方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに僕はとても好き。ユニークといえば、エリントンが作る曲のメロディもエリントン楽団が演奏する管楽器のハーモニーも同じ時期にいた他の楽団のハーモニーに比べるとユニークだと思います。僕の場合、オリジナリティのある音楽を作るぞという心意気みたいなものを感じられて気に入っています。いつか、僕もスティービー・ワンダーみたいにデューク・エリントンに捧げる曲を書いてみたいもんです。今日は、これで御終い。
 では、また明晩お会いしましょう。


[関連情報]
作曲:ビリー・ストレイホーン
作詩:ビリー・ストレイホーン


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